第16章 断章 極彩
「これは……前髪の方の式神です!」
「その言い方やめてもらえます?」
これにはすぐさま夏油が訂正を求めた。
それに式神というのも正しくない。
夏油が使う呪術は『呪霊操術』
文字通り取り込んだ呪霊を操れるというもの。
使役できる数が限られる式神と違って、取り込んだ分呪霊を使役できる。
理子と黒井は星漿体とその世話係とあって、最低限呪霊は視認できている。
ただ、式神と区別がつかないとなると、呪詛師に襲われてはひとたまりもなかったことだろう。
そこへ目をすがめている五条が口を挟んできた。
「思ってたよりアグレッシブなガキんちょだな。同化でおセンチになってんだろうから、どう気を遣うか考えてたのに」
天元と同化する役割を持った14歳の少女がこんなお転婆だとは夢にも思わなかった。
そしてそのお転婆娘、理子は五条を鼻で笑う。
「ふん、いかにも下賤な者の考えじゃ」
「あ゛?」
「いいか、天元様は妾で、妾は天元様なのだ!貴様のように“同化”を“死”と混同している輩がおるが、それは大きな間違いじゃ」
理子はビシッと人差し指を立てて得意げな顔だ。
五条と夏油は興味がなさそうに携帯の待ち受けの話をするが、それに構わず続けている。
「同化により妾は天元様になるが、天元様もまた妾となる!妾の意志、心、魂は同化後も生き続け……って、聞けぇ!!」