第16章 断章 極彩
「一応医者に診せる?」
「硝子がいればねぇ」
そんな会話が聞こえて星漿体の少女、天内 理子は目を覚ました。
「お、起きた」
白髪でサングラスをかけた知らない男がこちらを覗き込んでいる。
……とても怪しい。
そう判断するやいなや理子は反射的にその端正な顔を叩いていた。
「下衆め!妾を殺したくば、まずは貴様から死んでみせよ!」
術式を解いていたためビンタをまともに食らい、苛つく五条とそれを見て吹き出した夏油。
警戒した猫のように五条から逃れ、距離を置いた理子を宥めようと夏油が笑いかける。
「理子ちゃん、落ち着いて。私達は君を襲った連中とは違うよ」
「嘘じゃ!嘘つきの顔じゃ!前髪も変じゃ!!」
呪詛師に襲われていたところを助けたというのに、御礼の一言も無い上に嘘つき呼ばわり。
これには対外的に割と温厚な夏油もカチンとくる。
示し合わせるまでもなく、2人は理子を捕まえ、五条が足を、夏油は手を持ってギリギリと引っ張った。
「い、いやーっ!不敬ぞーっ!!」
慌ててそれを止める声がひとつ。
「お、おやめ下さい!」
「黒井!」
理子と共に夏油に助け出された黒井 美里。
彼女は星漿体世話係として理子の身の回りの世話をしている者だ。
「お嬢様、その方達は味方です」
「……何に乗っておるのだ?」
一緒に襲撃された黒井が無事でいることに安堵し、冷静さを取り戻した理子は黒井の下にいる四角い生物(?)に目が行く。