第16章 断章 極彩
星漿体の少女がいるというビルの敷地に入ってすぐの自販機でコーラを買った五条は口をつけながら、隣を歩く夏油に疑問を投げた。
「でもさー、呪詛師集団の“Q”は分かるけど、盤星教の方はなんでガキんちょ殺したいわけ?」
天元を崇拝しているのなら、むしろ同化に協力的でも良さそうなものだが。
「彼らが崇拝しているのは純粋な天元様だ。星漿体……つまりは不純物が混ざるのが許せないのさ。だが、盤星教は非術師の集団だ。特段気にする必要はない。警戒すべきはやはり“Q”の方だろう」
「まぁ大丈夫でしょ、俺達最強だし。だから天元様も俺達を指名……何?」
「いや……」
夏油から意味深な視線を向けられた五条は真意が分からず突っかかる。
「悟、前から言おうと思っていたんだが、一人称『俺』はやめた方がいい。特に目上の人の前ではね、天元様に会うかもしれないわけだし。『私』、最低でも『僕』にしな」
「あ゛?」
五条は飲み終わった空き缶を呪術で潰し、片目をすがめる。
「歳下にも怖がられにくい」
「はっ、嫌なこった」
そんな会話をしていると、目の前のビルの最上階からボンッという爆発音と共に黒煙が上がった。
「!」
「……これでガキんちょが死んでたら俺らのせい?」
2人が目を凝らすと小さな人影が落下している。
命を狙われている星漿体はあの少女で間違いないと判断し、即座に夏油が動いた。