第16章 断章 極彩
「ガキんちょの護衛と抹消ォ?」
「そうだ」
五条が椅子を傾けて聞き返すと夜蛾は至って真面目にうなずく。
「ついにボケたか」
「春だしね、次期学長ってんで浮かれてるのさ」
ヒソヒソと、しかし夜蛾に聞こえる2人の話し声に夜蛾の頭には青筋が浮かぶ。
「……冗談はさておき、天元様の術式の初期化ですか?」
「冗談で済ますかどうかは俺が決めるからな」
そう釘を刺して夏油の質問にうなずく。
「何ソレ?」
夏油の隣で疑問符を浮かべた五条に、オマエは知ってるハズだろという視線が向けられる。
“天元様”という呪術師が高専の地下深くにいて、日本各地の結界の強化を担っているというのは知っているが、術式の初期化というのが分からない。
「なんだよ」
「天元様は“不死”の術式を持っているが、“不老”ではない。ただ老いる分には問題ないが、一定以上の老化を終えると、術式が肉体を創り変えようとする」
「ふむ?」
「“進化”、人ではなくなり、より高次の存在と成る」
「じゃあいいじゃん」
カックい〜と五条は能天気だ。
全く緊張感のない様子だが、それに構わず更に夜蛾は解説を続ける。
「天元様曰く、その段階の存在には“意志”というものがないらしい。天元様が天元様でなくなってしまう」
それが呪術界にとっては大きな痛手となる危険性があるのだ。