第16章 断章 極彩
洋館が建っていた部分の地面は広く抉れ、洋館だった瓦礫の山から歌姫はなんとか立ち上がった。
「歌姫、助けにきたよ〜……泣いてる?」
クレーターになった地面を見下ろした五条は、サングラスの奥から青い瞳を覗かせて、ニヤリと笑っている。
ちなみに洋館諸共呪霊の結界を破壊した張本人である。
「泣いてねぇよ!あと敬語!!」
呪術高専の制服を纏った後輩を歌姫は青筋を浮かべながら叱った。
「泣いたら慰めてくれるのかな?是非お願いしたいね」
歌姫がいる場所から少し離れた洋館の庭、破壊を免れた場所で冥冥が薄く笑う。
洋館が破壊されている最中に安全な場所に避難していたらしい。
「冥さんは泣かないでしょ、強いもん」
「そう?」
そのやり取りを見て、歌姫は余計に頭にくる。
「五条!!私はね、助けなんて―……」
頼んでないと言おうとしたところで、歌姫に大きな影がかかった。
急に陰ったのを不審に思い振り向くと、まず目に入ったのが巨大な顔。
胴体にも顔、その下に短い足がついた異形。
洋館に巣食っていたと思われる大型の呪霊だ。
背丈だけでも歌姫の倍以上、横幅に至っては何倍か分からない程。
それが歌姫を襲おうと口を開けて迫るが、突如地面から現れた更に大きな口に飲まれる。
呪霊が呪霊を食ったのだ。