第16章 断章 極彩
夢を見た―
それは懐かしい日々、
五条 悟の青春
たった一人の親友とのかけがえのない思い出
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2006年 春―
「どこまで続くのよ、この廊下」
静岡県浜松市にある古びた洋館に呪霊祓除の任務で入っていた二級術師の歌姫は、突き当たりの見えない廊下にうんざりしていた。
共に任務にあたる一級術師の冥冥が腕時計を確認する。
「ざっと30分。15kmくらい移動したかな」
「途中つけた印も見当たりませんね」
「となると、屋敷に巣食う呪霊の結界はループ構造ではなく、私達の移動に合わせてツギハギしているのかもしれないね」
洋館の外観からはあり得ない長さの廊下は呪霊の結界でほぼ間違いない。
そして同じ場所をグルグル回っている可能性は潰せた。
「それか、果てしなくデカい結界か、ですかね……」
「かもね、でもその可能性は低いかな……壁も壊せない」
冥冥が試しに壁に触れるとグニィと歪む。
ただの壁ではない。
それらの考察を踏まえて歌姫が提案する。
「二手に分かれましょう。ツギハギ説が一番有力ですよね?二手に分かれて、できるだけ速く大きく動く。呪霊の結界の構成が間に合わなければ、外に出られるハズ」
結界を形成する呪霊を処理落ちさせようという案だ。
「私達どちらかが脱出できれば、後は外から叩くなり、応援を呼ぶなりできますよね」
「いいね、試してみよう」
冥冥が言い終わらない内に建物の天井にピシリと大きな亀裂が入った。
そこを起点にして吸い込まれるように洋館の屋根、壁、床と順番に潰れていく。
このままでは崩壊する……!
冥冥も歌姫も崩壊に巻き込まれまいと呪力で身体を強化した。