第15章 恋する乙女は突然に
女の子は太りやすいんだよ。
私は初めっから太ってたけど……
それが私のいつもの言い訳。
私だって、私を選ばない人を選ぶ気なんてサラサラない。
虎杖君は私が知らない私を見てくれる。
虎杖君以外の男の子なんて嫌い。
……でも、
『今の私ならもしかしたら』なんて―……
……私は、私が嫌いな人達と同じ尺度で生きている。
「またな!」
片手を上げた彼の笑顔が眩しくて、でも、その笑顔に真正面から応えられない自分がいることに気づいて……
分かれた後、帰りの駅のホームで堪えきれずに少し流れた涙を拭った。
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なずなは優子と分かれた駅の方を心配そうに眺めていた。
「……本当によかったのかな?連絡先とかも聞いてなかったし……」
「私とは交換したし、まぁ大丈夫でしょ。それよりなずな、私、ようやく自分の気持ちに気づいたわ」
「野薔薇ちゃんの気持ち……?」
藪から棒にどうしたのだろうか。
「私が彼氏を作るより先に、虎杖に彼女ができるのがなんかムカつく。私の後ろを歩けよ」
「そ、そうなんだ……」
……じゃあ私の場合はどうなんだろう?
なずなにそう聞き返す勇気はなく、ただ苦笑を浮かべることしかできない。