第15章 恋する乙女は突然に
そして3分も経たずに虎杖が店に入ってくるのが見えた。
手にはお菓子が入った紙袋を持っている。
「はやっ!?」
真っ先に見つけた野薔薇の中でにわかに焦りが出てくる。
あ、しまった!
まだ虎杖に優子のこと、言ってない!
優子は中学時代と比べて体型も身長も、髪の色まで変わっている。
これだけの変化、絶対誰だか分かんない!
―誰?―
なんて、久しぶりに再会した憧れの人に言われたくない台詞No.1なんじゃない!?
「なずな!アンタちょっと時間稼ぎに何かしてきなさいよ!」
「え……えっ!?」
向かいの伏黒と視線は合わせられないものの、それでも本に目を落とす姿に見惚れていたなずなは、急に話を振られて慌てふためくばかり。
「あれ?伏黒もいんじゃん」
「い、虎杖くん、そ、そのお菓子、どうしたの?」
狼狽えるなずなが食い気味に虎杖に話を振る。
こんなことで時間稼ぎできるとは思えないが、咄嗟にそれしか思いつかなかった。
「ああ、コレ?換金所探すの面倒だから景品交換しちゃった」
……換金所?
景品交換……?
「オマエ、パチンコしてたのか?」
聞き慣れない単語にフリーズしたなずなの向かいで、伏黒が読んでいる本から目を上げずに聞き返す。