第4章 宿儺の器と鉄骨娘
またやっちゃった……
なずなは自己嫌悪しながらトボトボと歩いていた。
入学初日から自分の方向音痴に悩まされてきたが、最近はほとんど迷うこともなくなっていて油断してしまった。
伏黒の指示通りに歩いていくと、竹下通りを出てすぐのコインロッカーに五条の姿が見えた。
近づくにつれ、伏黒、虎杖、初めて見る茶髪の女子学生が見えてくる。
あの子が新入生なのかな。
顔合わせ初日に申し訳ないと心の中で手を合わせ、4人の元へ急いだ。
「お、なずなもやっと来たね」
「すみません。迷っちゃって……」
深々と頭を下げる。
「彼女はなずな、野薔薇と同じ1年生だから、仲良くね」
「釘崎 野薔薇よ」
「渡辺 なずなです。よろしく、えっと、野薔薇ちゃん」
ちゃん付けにやや距離を感じたが、初対面ならこのくらいか。
気の弱そうな子、というのが野薔薇の感じた第一印象だった。
「これからどこか行くんですか?」
「せっかく1年が全員揃ったんだ。しかもその内2人はお上りさんときてる……行くでしょ?東京観光」
その言葉にお上りさん2人組の虎杖と野薔薇が勢いよく反応する。
「We love Tokyo!!」と息ピッタリだ。
「TDL!TDL行きたい!」
「バッカ、TDLは千葉だろ。中華街にしようぜ!」
「中華街だって横浜だろっ!?」
噛みついた野薔薇に横浜は東京と豪語する虎杖。
虎杖にとっては横浜も東京の括りらしい。
「喧嘩になっちゃうよ。ど、どうしよう?それにどっちも東京じゃないし……」
「放っとけ」
2人の口論になずなはオロオロするが、伏黒は冷めた目を向けていた。
「では、行き先を発表します」
虎杖達の言い合いを収めたのは五条の鶴の一声だった。
ピタリと静まった2人は五条の前にひざまずく。
「……六本木に行くよ!」
「六・本・木!」
先程の口論は嘘のようにお互いの手を取り合い、虎杖と野薔薇は素敵な響きを復唱した。