第4章 宿儺の器と鉄骨娘
目の前でスカウトマンと女子学生が揉めている、というより女子学生が一方的に詰め寄っていた。
学ランに渦巻のボタン、間違いなく呪術高専の制服だ。
「今からあれに話しかけるの?ちょっと恥ずかしいなー」
「オマエもだよ」
虎杖の浮かれた観光客にしか見えない姿に伏黒は舌打ちする。
「おーい、こっちこっち!」
五条の声に女子学生が気づいた。
ガチャンとコインロッカーを閉め、女子学生がこちらに向き直る。
さっきスカウトマンに詰め寄っていたときもそうだが、気が強そうだ。
「釘崎 野薔薇。喜べ男子、紅一点よ」
野薔薇がじとーっと虎杖達を品定めしている傍から五条が口を挟む。
「……女の子、もう1人いるよ?」
ちょうどその時、伏黒のスマホに着信が入った。
画面には「渡辺 なずな」の文字。
やはり迷子になっていた。
「今どこだ?」
『最初に行ったクレープのお店の前……です』
なずなの声は申し訳なさそうに尻すぼみになっている。
「そのクレープ店を右手に見て少し歩けば、五条先生が見えるはずだ」
「ちょっと恵、その言い方はどうなの?」
まるで目印扱いだが、日本人離れした長身に白髪、黒い目隠し、実際に人混みの中でも目立つ。
別にコインロッカーと言ってもよかったが、なずなの方向音痴を考えると、いろいろな場所に点在するロッカーより、ここにしかいない五条の方が確実だ。