第15章 恋する乙女は突然に
「虎杖くん、今とあんまり変わってないね」
背丈は伸びているのだろうけれど、学ランの下にパーカーを着ているところは変わらず、顔も両目の下にある筋以外はそのまま。
目の前の優子の変貌ぶりに比べたら些細な違いだ。
「卒業式の日に勇気を出して一緒に撮ってもらったんです。本当は連絡先とかも聞きたかったけど、私は東京に引っ越しが決まってたし……」
優子は頬を染め上げ、切なげに目を細める。
「でも、さっき虎杖君を見かけて、今の私ならもしかしたら、なんて……」
この表情、なずなにも覚えがある……というより経験したことがある。
私が伏黒くんのことを考えている時と同じ顔。
小沢さん、虎杖くんのことが好きなんだ……!
なずなの隣、優子の向かいに座った野薔薇も同じ結論に至ったようだ。
「え゛優子、それってつまり……そういうことね!?」
「はい!そういうことです!!」
優子も優子で全面肯定。
好きな人を言い当てられ、しどろもどろになった時のなずなとは姿勢が違う。
感心するなずなの横で野薔薇は神妙な顔つきで電話をかけ始める。
が、電話が繋がると途端に表情を崩した。
「あ、伊地知さん?伏黒、まだ乗ってますー?お店のURL送るんで、そこまで引き返してもらっていいですか?……アザッス!ヨロシクでーす!」