第15章 恋する乙女は突然に
この日、1年生4人は任務終わりに解散し、伏黒は伊地知と高専へ直帰、虎杖は観たい映画があると言って1人で時間潰しに行った。
野薔薇はあるファッションブランドの新作コスメを試したいということで街へ繰り出し、なずなも野薔薇についてきていた。
「なずなも何か買いたい物あるの?」
「ううん、特に何もないんだけど……」
なずなの返答はどこか歯切れが悪い。
こういう時のなずなは大抵何か言いたいことがあるのに我慢している状態だ。
その証拠にモジモジとスカートを弄っている。
「言いたいことがあるんならさっさと言う!」
「え、と、その……野薔薇ちゃんって、お化粧どうしてるのかなって……」
なずなは今まで七五三の時くらいしか化粧をしたことがない。
しかもそれも母にしてもらったので、自分で化粧した経験は皆無だ。
しかし、伏黒への好意を自覚してから急に気になり始めて止まらなくなってしまった。
ちなみに呪術高専はその辺りの校則は緩く、野薔薇は日常的にメイクしており、なずなはその姿を見て、自分も見習わなくてはと思いを強くしていたのだ。
「アンタ、メイクしたことないの?」
「お化粧は七五三の時とかに……」
「それはカウント外でしょ。スキンケアは?」
「ス、スキンケア……あ、保湿クリームとかなら……」
「……要するに、今まで気にしたことなかったのね」
なずなの性格を考えると、たとえ校則で禁じられていなくともまずメイクなんてしない。
ここまで興味を示していること自体が野薔薇には少し不思議だった。