第4章 宿儺の器と鉄骨娘
竹下通りに入ると、空気が一層華やかになる。
「すごいねぇ……」
なずなは活気に圧倒されて、ほうと息を吐いた。
「渡辺もこういう場所初めてなの?」
「竹下通りは初めて。いろんなお店があるね」
どこもかしこも目にも鮮やかで眩しい。
早速虎杖は目についたクレープ店を指差した。
「なあ、あそこのクレープ食おうぜ」
「うん!……伏黒くんは?」
「俺はいい」
というか、昼食を食べたばかりなのにまだ入るのか、この2人。
虎杖はさっきアイスも食べていたはず。
「うーん、迷う……」
スタンダードなものから、ケーキやアイスが載っているもの、しょっぱいものまで、種類が豊富すぎて、店先にあるメニューとにらめっこするなずな。
虎杖はもう会計を済ませてしまっている。
「俺、あっちのポップコーンも買ってくるわ。渡辺は先に五条先生と伏黒のトコに戻る?」
「うん……」
先にクレープを買った虎杖になずなは生返事する。
「じゃ、また後でな」
肯定と受け取った虎杖はなずなを置いて雑踏の中に消えていった。
「おいしい〜」
悩んだ末に選んだクレープを頬張ると口いっぱいに甘さが広がる。
しかし、ゆっくり堪能している時間はあまりないので、なるべく味わいながら、急いで食べきった。
「…………あれ?」
食べ終わってやっと、なずなは自分の置かれた状況に気づいた。
右を見ても、左を見ても虎杖が見当たらない。
待ち合わせ場所に戻ってきた虎杖のはしゃぎすぎた姿に、伏黒は若干引いた。
両手にはクレープとポップコーン、さらに奇天烈なサングラスまでかけている。
「あれ、渡辺は?」
先にこっちに戻ってきているかと思っていたが、姿がない。
その言葉に眉をひそめたのは伏黒だ。
「一緒だったんじゃないのか?」
「どのクレープにするか迷ってたから、俺ひとりでポップコーン買いに行ったんだよ。先にこっち戻ってるって言ってたんだけどな」
伏黒は長いため息を吐く。
もう嫌な予感しかしなかった。
「なずなはまだ買い物中?もうすぐ新しい1年生来ちゃうんだけど」
ま、紹介は後でもいいかと五条も気にする素振りを見せなかった。