第14章 最強の教示
「あ、あああの!は、話が違……っ!」
なずなはにわかに狼狽え始め、アイマスクを外してしまう。
そんななずなに五条は肩をすくめながら、切られた袖を見えるように振った。
「大丈夫大丈夫、袖がちょっと切れただけで、僕には傷ひとつないから。次からはなずなが中和しきれないくらい強く術式を張るし、何なら僕、反転術式も使えるしね」
次からは今以上に術式を中和しにくくなるし、万が一五条自身が斬られたとしても反転術式で治癒できる。
何よりTシャツの袖に切れ込みが入った程度でまたなずなの動きが鈍るのはあまりにももったいない。
「それよりさっきの術式中和、いい線いってるんじゃない?鬼切の呪力もちゃんと出力できてたし」
「へ……?」
キョトンとしているなずなに五条も目を丸くする。
「え、何、無意識だったの?」
「あ、と、その……鬼切の呪力を馴染ませるのにどうすればいいか見当がつかなくて……私の意識を鬼切に合わせたというか、鬼切を含めて私は一振りの刀っていうイメージをしてて……」
「なるほどね、実際できたんだから、そのイメージは間違ってないと思うよ。僕が見た感じだと、簡易領域に近いかな」
通常、術式の中和と考えると、まず領域展開だ。
領域には必中の術式効果がある。
そのため、領域内ではいくら無下限呪術を使おうとも無限が中和され、攻撃が当たる。
そして次点に簡易領域。
こちらは領域対策のひとつで、領域展開の必中必殺のような強力な効果はないが、領域内で簡易領域を使えばその必中必殺の術式効果を中和することができる。
先程のなずなは、鬼切のみに簡易領域を作り出して無下限呪術を中和してきたように見えた。