第14章 最強の教示
なずなを捕まえていた手が離れ、後退った音と気配。
いや、それよりも……
今、何か切った手応えがした。
薄い布、のような……?
あれ?
でも五条先生に鬼切は届かないんじゃ……?
疑問と戸惑いで動きが止まったなずなと向かい合う五条も驚いて自分の左腕に目を落とした。
袖に少し切れ込みが入っている。
鬼切の呪力が妖しく揺らいだと思ったら、直後に切られた。
無下限呪術を発動していたにもかかわらずだ。
「あ、あの、今、何か切っちゃったと思うんですけど……」
戸惑うなずなをよそに五条はくくっと喉の奥で笑う。
呪力を同調させ、出力を上げるつもりが、なずながやったのはその予測の遥か上。
「なずな、僕の術式を中和したね」
昨日も驚かされたが、ここまでやってのけるとなると、五条の見立てが甘かったとしか言いようがない。
さすが、鬼切が一級術師だった彼女の父を捨ててまで選んだ逸材だ。
まったくこれだから武士の家系ってのは侮れない。