第14章 最強の教示
次々と繰り出される鬼切を避けていく中、少しばかりの違和感を五条の耳が拾った。
なずなにしてはやけに足音を立てるな……
昨日はもっと静かだったし、彼女の体格や体重を考えると、意識して立てないとこんなに足音は大きくならないだろう。
「なずなにしては足音が荒いね、目が見えないからフラストレーション溜まってる?」
「いいえ……!」
なずなはキッパリと否定しつつ、やはり力強く床を踏んで五条に迫る。
「どうしたら五条先生を捉えられるか、考えた結果です」
そう答えながら、袈裟がけに振り下ろしてくる鬼切を、五条はバックステップで避けた。
難なく攻撃を避けられたなずなだったが、目隠しされていても顔はまっすぐ五条の方を向いている。
「昨日は先生の声と足音がないと分からなかったので、自分だけで先生の位置を割り出せないか考えました。足音なら私を中心に広がって五条先生のいる所で反射する。反射してくる音と床の振動を拾ってます」
いくら身体強化しても聴覚だけ、触覚だけといった1つの感覚に頼っていては相手の正確な位置は分からない。
だから、強化できる感覚を組み合わせて使おうと考えた。
こういう使い方をするのは初めてだったが、感触は悪くない。
五条先生が発する音や振動と私が発して反射してきたものを複合的に捉えれば、一気に精度を高められる。
なぜか今日の先生は攻勢が弱いし、これなら呪力を探す余裕もありそう。
やられっぱなしだった昨日とは違う心地よい緊張感は、なずなの意識をより鋭く研ぎ澄ませていく。
「いいねぇ、その調子でペース上げていこうか!」
楽しそうな五条の声が一息に迫ってきた。
来る……!