第14章 最強の教示
翌日―
「五条先生、よろしくお願いします」
姿勢良く礼をしたなずなの表情はどこかさっぱりとしていた。
伏黒に迷いを打ち明けたことで、少し心の曇りが晴れ、昨夜は訓練内容の復習と今日はどうすべきかの予習に集中できた。
昨日できなかったことをできるように。
できたことをもっと上手くできるように。
焦りを鎮め、感覚を研ぎ澄ませるように深く息を吐く。
この稽古で私が得たいものは―……
五条もなずなの変化を感じ、期待が高まる。
「今日は気絶せずに僕に一撃入れられるように頑張ってね」
アイマスクを渡すと、なずなもためらうことなくすぐに着け、鬼切を抜く。
構えた鬼切にも迷いがない。
「いきます……!」
昨日とは打って変わって、大きく踏み込んでくるなずなに五条は笑みを深めた。
最初も最初、僕の位置が目隠しする前と変わらないうちに仕留める作戦かな。
まっすぐ伸びてきた突きを右に避けると、その動きを読んでいたかのように、すぐ追撃がくる。
昨日の及び腰気味な動きからは考えられないようなキレの良さ。
捉えきれていなかった五条の位置もかなり正確に認識できるようになっている。
まるで憑き物が落ちたような、吹っ切れた動きに五条も高揚した。
教え子の成長を間近で見るこの感覚は、何度経験してもたまらない。
1日も経たずに劇的に変わったなずなの動きをもっと見たくて、こちらからはあまり攻撃せずにかわすことに専念する。