第14章 最強の教示
「伏黒くん、その、話を聞いてくれてありがとう……私は大丈夫、頑張って強くなるよ。怪我もしないように気をつけるから」
話を聞いてくれて、無理するなと言ってくれたことが嬉しくて、自然と笑顔が浮かぶ。
それが彼を余計に心配させていようとは夢にも思わず、なずなは寮へ向かって歩き出した。
―強くなりたい―
悩みを打ち明け、伏黒の優しさに触れたことで、その思いはいっそう強まった。
伏黒くんに心配かけさせたくない。
早く追いついて、私も皆を守れるようになりたい。
時間を有効活用しなくちゃ、皆に追いつけない。
私を気遣ってくれた伏黒くんに報いれない。
人に刀を向けることに対する迷いが消えたわけではないけれど、五条先生に対してだけいえば、迷っているだけ無駄だ。
今の私にとって本当に怖いのは、人に鬼切を向けることじゃなくて、弱い私を庇って誰かが傷つくことや私が弱いせいで誰かを守りきれないことなんだから。
自分の中の焦りや不安を整理していくと、徐々に今すべきことが見えてくる。
鬼切の呪力を馴染ませる―……
たぶんそれが術式の理解への近道なんだ。
具体的にどうすればいいかなんて分からない。
でも、五条先生はその訓練の一環として、鬼切を使えと言い、私に目隠ししてまで本気を出させようとしてくれた。
そして、最後の一撃がすごく良かった、とも。
最後の一撃、
私はあの時、何かに捕まえられていて、殺されたくないと思って逃れようとしていた気がする。
明確に攻撃した覚えはないけれど、気づいたら鬼切を持ち上げていた。
あの時、私は五条先生に鬼切を向けていた……?
その感覚を思い出そうと頭を捻っていると、すぐに寮が見えてくる。
そして部屋に着く頃には、あれほど酷かった腕の打ち身ももうほとんど治っていた。