第14章 最強の教示
鬼切が内包する莫大な呪力を使いこなせていないことや術式の理解が足りないと指摘されたこと。
鬼切の呪力を馴染ませるために手合わせすることになったが、鬼切で五条に向かうことに抵抗があること。
そして、無下限呪術で五条自身が傷つかないのを証明されてもやはりまだ迷うこと。
小さな声でぽつりぽつりと打ち明けたなずなが申し訳なさそうに縮こまっているのを見て、伏黒は更に胸が痛くなる。
無理もない……
初めて呪詛師を手にかけてからまだ2ヶ月も経っていないのだ。
激しい夕立が降ったあの日、駅に佇んでいたなずなの虚ろな表情を思い出す。
あの姿を見た時、そして線路に向かって歩き出した時は心臓が止まるかと思った。
失ってしまうかもしれないと、心底怖かった。
だが、なずなの方がよほど苦しかったろう。
思い出したくない記憶を無理やり辿って報告書を書き終えた後、彼女は自責の念に駆られて、線路に飛び込もうとした。
自殺寸前まで自身を追い詰めるほどの罪の意識はそう簡単には消えない。
今も、そしてこの先も彼女を苦しませる。
「渡辺、鬼切を人に向けるのが怖いんじゃないのか?」
決して責めるようなものではない優しい口調に、なずなもこくりと小さくうなずく。
「……そ、そうなんだと思う……」