第14章 最強の教示
きゅん、とまた胸がときめくのを感じた。
優しい言葉をかけてくれたことが嬉しくて仕方なくて、なずなの顔に一気に熱が集まる。
「ぁ、ありがとぅ……」
赤くなった顔や緩んだ表情を見られたくなくて、咄嗟に顔を伏せ、か細い声で一言言うだけで精一杯だった。
「……失敗って何があったんだ?」
その声にハッと顔を上げ、伏黒と思いきり目があってしまい、また勢いよく顔を下げた。
小さな火が灯ったように温かくなった胸を押さえる。
相談……してもいいのかな。
私が人に鬼切を向けられないこと……
でも、こんなこと相談されても伏黒くんは困るんじゃ……
不安が首をもたげる。
だが、このまま立ち止まっていては追いつけないという焦燥の方が今は大きかった。
少しの間葛藤し、なずなは意を決して口を開く。
「……今日は鬼切の呪力を馴染ませるための稽古だったんだけど、実戦形式だから、木刀じゃなくて鬼切を抜いた状態で……でも、私は全然本気を出せなくて……」
せっかく五条先生が貴重な時間を割いて稽古をつけてくれたのにという申し訳なさがこみ上げてくる。
「五条先生は無下限呪術を使ってるから髪1本切れないよって、実演までしてくれたんだけど……それでも思い切って向かえなくて……」
うまくまとめることができず、伏黒にも申し訳なくなってきて、なずなはチラリと視線を上げる。
少しだけ目が合った伏黒は結論を急かすこともなく、静かに傾聴する姿勢だ。
それに安堵してなずなは続けた。
「……稽古は続けてもらえたんだけど、ちょっと受身に失敗して……打ち身が酷いことになっちゃって……」
気づくと、どうして稽古がこういう内容になったのかという経緯まで取り留めもなく打ち明けていた。