第14章 最強の教示
2年生達もここまで怪我を負わせる程のことはしない。
何より今日、彼女はどこか別の場所に行っていて、先輩達と体術訓練はしていないはずなのだ。
「誰と訓練してたんだ?」
「……ご、五条先生」
ためらいがちななずなの口から、伏黒が予想だにしなかった名前が出てきた。
「その……私、この前の任務であんまり役に立てなかったでしょ?だから五条先生に頼んで稽古をつけてもらってるの……」
意外な名前に驚きはしたものの、伏黒はどこか納得した。
そしてなずなを追い詰め、怪我を負わせた五条に対して苛立ちが湧いてくる。
失敗したと言っていたが、相手が相手だ。
あの人、加減というものを本当に知らないから。
「五条先生は言わないと分からないところがあるから、キツすぎるなら遠慮なく言えよ?」
「き、厳しいとか、そういうことはないよ。怪我しちゃったのは、私がうまく動けなかったせいだし……」
大したことない、大丈夫だと笑うなずなに締めつけられるように胸が痛んだ。
彼女の性格を考えると、稽古をつけてもらっている手前、注文をつけるのは気が引けるのだろうということは想像がつく。
その上で、伏黒は少しでもなずなの助けになればと提案する。
「本人に言い辛かったら俺に言ってくれていい。そしたら俺が伝えるから」