第14章 最強の教示
「いたた……」
特訓の後、なずなは袖を捲って打撲を確認していた。
激しく壁にぶつけた左腕が特に酷く、内出血の赤黒い変色が二の腕まで広がってしまっている。
幸い骨は折れてなさそうだが、腫れていて熱い。
鬼切を持っていればいずれ治るが、何か冷やすものをもらってきた方がいいかと考えていると、足音が近づいてきた。
「渡辺……?」
「あ、伏黒くん」
走り込みの後なのか、先輩達との手合わせの後なのか、うっすらと汗が滲む伏黒の姿にドキリと胸が高鳴る。
最近はなんとか話せるようになってきているが、相変わらず心拍数は上がるし、顔が赤くなっていないかと内心気が気ではない。
「っ!それ、どうしたんだ?」
なずなの腕に広範囲に広がった内出血を見て、伏黒が心配そうに眉を寄せる。
「こ、これは、えっと、訓練で少し失敗しちゃったというか……驚かせちゃってごめんね。で、でもすぐ治るから……」
「治るっつっても痛ぇだろ……」
どぎまぎするなずなをよそに、伏黒は腕の状態を確かめようと一歩近づく。
しなやかに筋肉がついたなずなの腕は、本来ならもう少し細いだろうに、広範囲の内出血で痛々しく腫れている。