第14章 最強の教示
まだ見ぬなずなの能力をどんどん伸ばしてやるためにも特訓メニューを組み直そうかと嬉々として思案していると、不意にノックの音がして戸が開いた。
「失礼します、五条さん、夜蛾学長から至急とのことでご連絡が……わ、渡辺さん!?」
「伊地知ィ、今いいところなんだから、邪魔すんなよなー」
口を尖らせ文句を言う五条をそっちのけで、伊地知は目に飛び込んできた光景に絶句した。
なずなが五条に掴み上げられている。
……いや、それよりも彼女は目隠しされた上にボロボロで、それなのに五条に鬼切を突きつけていて……
何が何だか、状況が読めない。
伊地知があんぐりと口を開けて固まっていると、五条の腕の下で止まっていた鬼切が下ろされた。
「……ぅ、ん……あれ……?」
「おっ、起きたね」
アイマスクの下でなずなの瞼が窮屈そうに動いたので、外してやる。
なずなはというと、急に視界が開けたと思ったら、なぜか五条が眩しい程の満面の笑顔でこちらを見ているので、伊地知と同様に訳が分からないといった様子だ。
「なずな、最後の一撃はすっごく良かったよ、その感覚を忘れないようにね」
「は、はい……?」
ニコニコしている五条はなずなを掴んでいた手を離す。
「残念だけど、今日はここまで。続きはまた明日だね」
「あ、えっと、ありがとうございました」
正直なところ、最後の一撃はぼんやりとしていてあまり覚えていなかったのだが、上機嫌な五条に何も言えず、なずなは戸惑いながら、鍛練場を後にした。