第14章 最強の教示
床を踏む音がまた近づいてくる。
拳が空を切る音も―……
「くっ……!」
横に飛び退くようにしてなんとか攻撃をかわした。
「お、避けたね。いつまで避けられるかな?」
少しだけ楽しそうな五条先生の声。
見えないせいで大きな動きで避けざるを得ない。
けれど先生の言う通り、いつまでも避け続けてはいられない、どこかで限界が来る。
聞こえてきた声からして数歩分距離が開いたかな……
呪力を細かく辿るのはまだ時間がかかる。
でも五条先生は時間をくれない。
……だったら、時間を作るにはどうすればいい?
「見えないからって、そこにいないとは限らない。他の感覚も使えよ」
さっきよりも少しだけ近くに聞こえた声にハッとする。
そうだ、梔子駅の時もそうだった。
見えない呪霊に殺されていてもおかしくなかった。
今は視覚が塞がれている。
自由に使えるのは、聴覚と嗅覚と触覚。
この状態でできることを考えるんだ……!
五条先生は私に近づいてくるのだから、探す必要はあまりない。
近づいてくる方向と攻撃タイミングを今使える感覚を強化して察知する。
そして初撃をかわして、カウンターを狙う。
カウンターが決まって隙ができれば、そこを突けばいい。
呪力を探るのは、全力で隙を作った時……!