第14章 最強の教示
早速打ち合いを開始したが、なずなの動きはぎこちない。
踏み込みも甘ければ、鬼切を振り抜く速度も遅い。
五条が少し身を捻るだけで簡単に避けられてしまう。
以前に2年生達や呪骸相手に訓練していた時の方がよく動けていたくらいだ。
「全然じゃん。なずな、本気出しなよ」
五条はサングラスの奥で片眉を上げる。
「強くなりたいんじゃないの?」
「ぇと……す、すみません……」
まただ……
八十八橋の時もそうだったが、剣筋が迷う。
どうしても本気で斬りかかることができない。
迷ってはいけないのに……
昔からずっとそう教わってきたのに……!
肩を縮こませて俯くなずな。
この原因には五条も思い当たる節があった。
交流会前、なずなが初めて呪詛師を殺した任務だ。
昇級して新しい学生証を渡した時や今回稽古を頼んできた時の「強くなりたい」という言葉はもちろん嘘ではない。
しかし、人を殺したことの罪の意識がまだ拭い切れていないのも事実。
また人を傷つけるのではという危惧が彼女の動きを鈍らせている。
であれば―……
「なずな、鬼切をここに振り下ろして」
「ぇ、えっと……その……」
五条はそう言って自分の左腕を指すが、それでもなずなは動けなかった。