第14章 最強の教示
反転術式とは、本来マイナスである呪力と呪力をかけ合わせてプラスの呪力を生成するというもの。
マイナスの呪力では身体強化はできても、傷の治癒はできないが、プラスの呪力であれば治癒が可能になる。
ただし、これは非常に難しい呪力操作のため、使える術師は一握りだ。
よほどの才能がない限り、知らないうちにできていたというのはない。
「……まだ分かんない?」
難しい顔をしているなずなにもう少しヒントを出してやる。
「なずなの身体強化はさ、なずなの呪力と鬼切の呪力、2つをかけ合わせてるわけ」
ここまで言えばさすがに分かるかな。
「……それじゃあ、プラスの呪力で身体強化をしてるってことですか?」
「そう、大部分は鬼切の呪力だろうけど、割合がどうであれ負の呪力同士を掛ければプラスになる。だから、鬼切を持っていれば傷も自動で治る」
五条は浮かべた笑みをさらに深める。
「長ったらしい座学なんてつまんないよね、早速実践いってみようか!」
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「あの……木刀とか竹刀じゃないんですか?」
鬼切を抜けと指示されたなずなは、ためらいがちに五条に尋ねた。
それもそのはず、なずなが抜き身の鬼切なのに対し、五条は素手で十分と言わんばかりに丸腰なのだ。
両者の実力差を考えると妥当、むしろこれでもまだ五条に分がある状態なのだが、訓練で素手の相手に真剣を向けるのはなずなにとっては抵抗がある。
「何言ってんの。それは真希達と毎日やってるでしょ。任務の時は鬼切で戦うんだから、同じ条件でやらなきゃ稽古にならないよ」
「わ、分かりました……お願いします……!」
せっかく自分のために時間を割いてもらっているのだ。
ここでためらうのは全くの無意味というもの。
なずなは一礼して鬼切を構えると、五条の方へ大きく踏み込んだ。