第14章 最強の教示
五条の言葉に、なずなの口から思わずかねてよりの疑問が飛び出した。
「……私、考えてもずっと分からないことがあるんです」
脳裏をよぎるのは、思い出すのも辛いあの日の記憶。
「どうして父や兄ではなく、私だったんだろうって……」
鬼切がなぜ自分を選んだのか。
父は一級術師だったし、兄は自分より剣術も呪力量も上だった。
鬼切が術式関係なく使い手を選ぶのなら、自分が選ばれるのはおかしい。
考えても考えても答えが出ないのだ。
俯いたなずなに五条はただ事実のみを伝える。
「鬼切は当代で最も自身を使いこなす者を使い手に選ぶとされている。それ以上でもそれ以下でもない」
それは、なずなが渡辺家の誰よりも鬼切を使いこなせる可能性が高いということ。
だが、彼女にはその自覚がない、実力もまだまだ追いついていないから、自信も持てない。
この場でどう諭したところで、相応の実力が身に付かなければ、なずなの疑問や不安は払拭されないだろう。
「術式の話に戻ろうか、例えば、君は自分の負傷は自動的に治せるよね?その治癒がどういう原理で働いているか、ちゃんと分かってる?」
「えっと、反転術式を使ってるからじゃないんですか?」
「反転術式を使うには高度な呪力操作が必要だ。まぁ、メチャクチャ頑張れば無意識でもできるようになるけど、なずなはまだその域じゃない」