第14章 最強の教示
「オマエのせいだ」
虎杖の頬に口だけ現した宿儺が嗤った。
「オマエが俺を取り込んだ。目覚めたんだよ、切り分けた俺の魂達が」
ケヒヒと実に愉快そうに口を歪めているが、虎杖は真っ直ぐ前を向いたまま歩き続ける。
「大勢の人間を助ける、か……小僧!オマエがいるから人が死ぬんだよ!」
「おい、それ、伏黒に言うなよ」
哄笑していた宿儺が気づいたように口を閉じる。
宿儺は虎杖と肉体を共有している。
必然、虎杖が体感したことも記憶しているわけで。
虎杖が思い起こしたのは、自分が一度死ぬことになったあの少年院で、伏黒に言われた言葉。
―自分が助けた人間が、将来人を殺したらどうする?―
今回の八十八橋の呪殺が宿儺の言う通り、呪霊の中にあった指が目覚めたことが原因であるなら……
そのことに伏黒が気づいたら?
虎杖を助けた彼がどんな思いをするか―……
「言うなよ」
一段と低い声で宿儺に念押しした。