第14章 最強の教示
とある銀行のATMコーナーで女性の高らかな笑い声が聞こえ、利用客の目は一斉にその声が聞こえたATMに向けられた。
声を発した張本人である冥冥は、周りには気にも留めず、通帳に記帳された文字を見て満足げに目を細めている。
―ゴジヨウ サトル *10,000,000―
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すっかり日の傾いたグラウンドで、野薔薇となずなは伏黒から八十八橋の呪殺についての確信を聞いた。
今回の呪殺が始まったのは、虎杖が宿儺の指を飲み込んだことで八十八橋の呪霊に取り込まれていた指が呪力を解放したことが原因であったこと―……
「虎杖に共振の話はするな」
「……それって確定なの?」
「ほぼな、終わった案件だ。気づく可能性があるとすれば、俺達か新田さんくらいだと思う」
「も、もし虎杖くんが指を食べなかったら、今回のことも起こらなかったってこと……?」
おずおずと尋ねたなずなに伏黒は首を横に振った。
「違う。単にキッカケになっただけだ。仮に共振がなかったとしても、八十八橋の呪殺はいつ始まってもおかしくなかった」
そして、なずなの言う「もしも」が実現していたのなら、伏黒は6月の宿儺の指の回収任務で死んでいたかもしれないのだ。
「そもそも指を飲み込んだのは、俺を助けるためだ……でもアイツはそれで納得しねぇだろ」
多くの人間を呪いによらない、正しい死に導くために虎杖は呪術師になった。
それなのに宿儺の指を飲み込んだことで、各所にある指が活性化されたと知ったら、責任を感じるに違いない。
「だから、言うな」
「言わねぇよ。レディの気遣いナメんな」
「私も秘密は絶対に守るよ」