第4章 宿儺の器と鉄骨娘
五条から集合場所として指示された原宿駅に向かうため、虎杖達3人は電車を待っていた。
少しするとアナウンスとともにホームに電車が入ってくる。
「げ、満員じゃん」
思わず虎杖が声を上げた。
到着した電車は通路や出入口付近にも人が溢れている。
満員電車ー
ザ・東京って感じだ。
しかし、伏黒やなずなからすればこの程度、通勤・通学ラッシュ時に比べたらなんともない。
「ムギュッと人の隙間を狙って入るんだよ。大丈夫、まだ乗れそうだし」
「あまり奥には行くなよ。原宿で降りれなくなる」
やや尻込みする虎杖に2人がアドバイスする。
人が降りるのを待ってから、なずなはするすると隙間をぬって入っていく。
だが、満員電車に慣れていない虎杖は、なずなのようにはいかなかった。
他の乗客に後ろから押されてなんとか乗車する。
「あー、暑かったー……」
原宿駅に到着し、電車を降りた虎杖の力ない第一声だった。
一応車内は冷房がついていたようだが、人の密度が高すぎてあまり効いてなかった気がする。
あのギュウギュウ詰めの電車に乗ってケロリとしている伏黒と渡辺はすごいと思う。
「俺、ちょっとあそこのコンビニでアイス買ってくる」
集合時間10分前、アイスを買ってくる余裕はあるだろう。
まだ6月だが、虎杖は一刻も早くクールダウンしたかった。
虎杖を見送り、ふとなずなの肩の竹刀袋が伏黒の目に入った。
「今更だけど、鬼切持ってきたんだな」
「うん、五条先生が持ってこいって」
新入生を迎えるだけなのに必要だとは思えない。
単になずなの呪具を紹介するつもりなのか、それとも呪いを祓う可能性があるということか。
考えている内に、アイスをくわえた虎杖が戻ってきた。
そして案の定、集合時間になっても五条は現れなかった。