第4章 宿儺の器と鉄骨娘
翌日、伏黒が高専に帰ってきた知らせを聞きつけ、なずなは医務室に来ていた。
「あの家入先生、伏黒くんの怪我はどうですか?」
「ああ、治療はもう終わってるよ。大した怪我じゃなかったし……今は部屋で寝てるんじゃないかな」
家入がそう言うのなら大丈夫だ。
なずなは安堵して寮に戻った。
「あれ、五条先生からメール……?」
昨夜の伏黒の写真が頭をよぎったが、確認しないわけにもいかない。
恐る恐る画面を見ると、至急来るようにというメッセージだった。
なずなは五条から呼び出され、男子寮の前にいた。
てっきり入口近くで待っているのかと思っていたが、誰もいない。
「お、お邪魔します……」
果たして自分が勝手に入っていいものか迷ったが、一応断りを入れて戸を開ける。
なんとなく忍び足になって先へ進むと、誰かの話し声が聞こえた。
「あのー、すみません」
「あ、やっと来たね〜」
廊下の角から顔を覗かせたなずなに五条が手を振る。
すっかり傷の治った伏黒の隣には、淡い髪色の少年がいた。
「あの子はなずな、悠仁と同じ1年生だよ」
「俺、虎杖 悠仁、仙台出身。よろしくな!」
「渡辺 なずなです。埼玉出身です。……よ、よろしく」
笑顔で自己紹介した虎杖になずなもペコリと頭を下げる。
「悠仁はね、両面宿儺の指を飲み込んじゃったんだ。そしたらびっくり、宿儺を抑え込んで正気を保ってられる器だって判明して」
「……はい?」
両面宿儺の指といえば特級呪物だ。
千年以上前に実在したと言われる呪いの王・両面宿儺。その死後に遺された指。
呪いは日に日に強くなっているとされ、誰も破壊できない屍蝋。
もちろん人間が食べたら猛毒だ。
それを、飲み込んだ?
なずなは理解が追いつかず、ポカンとしてしまう。
「まぁ、そうなるよな」
固まっているなずなを見て伏黒が呟いた。
「さて、自己紹介も終わったことだし、明日はお出かけするよ!もう1人の1年生を迎えに行きます」