第14章 最強の教示
1年生達が八十八橋の呪いを祓った2日後―
「いや〜、指の呪霊だけじゃなくってさ、遺体を調べてビックリ!なんと例のブツの受肉体だったの」
五条は上機嫌で歌姫に電話しながら、コーヒーに角砂糖をこれでもかと入れている。
“例のブツ”というのは、交流会時に高専忌庫から盗まれた特級呪物・呪胎九相図のことだ。
今回、その九相図の2番、3番の受肉体が宿儺の指を狙って八十八橋に現れたが、1年生達が見事返り討ちにした。
まぁ、回収した指の方は虎杖が取り込んだので、上層部としてはそれが少々不服のようだが、五条からすれば、いずれ取り込むのだからいつ取り込んでも同じこと。
上層部から虎杖へのお叱りの通達はもちろん握り潰した。
「特級相当を3体撃破。今年の1年は豊作だね。僕の指導者としての腕がいいのかな」
『オフの日にアンタと長話したくないのよね、飲み会の幹事の件でしょ?』
電話口からうんざりしたような歌姫の声、前半は本音だろうが、後半はそのままの意味ではない。
五条も話を合わせるように切り返す。
「どう?目星はついた?」
『全然。私含め皆忙しいの。どうする?学生にも声かけてみる?』
以前の交流会―
五条は歌姫にある調査を依頼していた。
今回の電話はその経過確認だ。
ただ、内容は思ったより芳しくない。
「僕、下戸だから、ノンアルでも構わないよ。引き続き声掛けよろしく」
電話を切った五条は指でスマホを弄び始める。
歌姫の周りは何が聞いてるか分からないからな……
内通者が学生ってのは考えたくないね。
「……さて、後は頼むよ、冥さん」
五条はスマホから振込の操作をする。
そのすぐ後にメッセージの着信音が鳴った。
突発の任務かと思ったが、そうでもない。
届いたメッセージを読んで、五条の口は弧を描いた。