第13章 八十八橋の呪詛
遅れて橋の下に到着した虎杖と野薔薇が立ち尽くしたなずなを見つけて駆け寄ってくる。
「なずな、伏黒は見つかっ……!」
「え、伏黒……?」
固まっているなずなの視線を追い、その先の動かない伏黒を見て、2人もゴクリと生唾を呑む。
「ちょ、なずな、何がどうなってんのよ!?」
野薔薇がなずなの肩を揺するが、青ざめたなずなは伏黒の方を見つめたまま、動揺しきっていて言葉も出ない。
「ふ、伏黒、まさか死んでねぇよな……?」
虎杖が恐る恐る手を伸ばすと、パチリと伏黒の目が開いた。
3人は思わずビクッと肩を揺らしたが、単に気を失っていただけのようで、目を覚ました伏黒はすぐに上半身を起こす。
「お、戻ったか。無事で良かった……」
「ビ、ビビったーっ!死んでんのかと思ったー!!」
ヨカッターと虎杖と野薔薇がお互いの手を叩く傍らで、なずなはまろぶように伏黒の横に膝をついた。
「け、怪我は!?どこが、どんなふうに痛い?頭打ったとか、骨折れてるとか、関節外れたとかは!?気持ち悪いとか、ふらつきとかは?……あ、あと、呼吸が辛いとかはない!?」
こうも捲し立てられては答える暇もない。
そして何より3人の大きな声は伏黒の頭に響いた。
「大丈夫だ……それより声量落としてくれ……頭痛ぇ……」
「ご、ごめん……」
しゅんとしてしまうなずなとは対照的に、申し訳なさを微塵も感じていない野薔薇は、伏黒をたしなめる。
「宿儺の指持って寝こけるなよ、危ねぇなぁ」
「なんで指のこと知ってんだよ」
「それ、聞く余裕ある?」
伏黒は「ない」と即答して、宿儺の指に目を落とす。
相変わらずの強烈な呪力だ。
「とりあえず新田さんに連絡して、応急で封印してもらわねぇと呪霊が寄る」
新田に黙って八十八橋に来てしまった手前、ここまで迎えに来てほしいと頼むのは気が引けるが、指を裸のまま持って帰るのは避けたい。