第13章 八十八橋の呪詛
先に伏黒の所に到着したなずなは、ヒュッと息を呑み、その場に凍りついてしまった。
「ふ、しぐ、ろ、くん……?」
なずなの視線の先には倒れた伏黒。
手には宿儺の指があり、顔の至る所から血を流したような血痕……そして何より、足音にも声にもピクリとも反応しない。
呼吸をしているかどうか、心臓が動いているか、出血している箇所はないか、骨折していないか……
すぐに確認しなければならないことがたくさんあるはずなのに、なずなは一歩も動けず、倒れた伏黒を見つめることしかできない。
1人で八十八橋の呪霊を祓ったの?
それで伏黒くんはこんな大怪我を?
でも、あの呪霊には攻撃能力がなかったはずじゃ……?
……ううん、宿儺の指を取り込んでいたんだ、ただで祓われるとは考えにくい。
最後の抵抗で攻撃能力を有した形態に変態したのだろうか?
こんなことになるのなら、あの時、無理にでも結界内に戻るべきだった?
そんな疑問が頭の中で溢れかえっても、目の前の事実は揺るがない。
伏黒くんが死んでしまったかもしれない―……
確かめなくてはいけないと頭では理解しているのに……
怖くて怖くて背筋が震え、足も根が生えたように全く前に出せなかった。