第13章 八十八橋の呪詛
路肩にハザードを点けて止まった車中。
『おかけになった電話は、電源が入っていないため、お繋ぎすることができません』
「やっぱ出ねぇっス!!」
電話から聞こえる無機質なアナウンスに新田は思わず叫んだ。
ホテルがもぬけの殻になっていることに気づいて慌てて出てきたが、誰に電話しても繋がらない。
「どこ行ったガキ共ぉっ!!」
苛立ちから荒くアクセルを踏み込み、黒塗りの車が深夜の街中を走り出す。
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「ごめん、野薔薇ちゃん……」
左手首に刺さった五寸釘を抜いている野薔薇になずなは頭を下げた。
野薔薇の方はなぜいきなり謝られるのかと首を傾げる。
「私、あの2人が呪霊じゃないって、たぶん途中で気づいてた……」
それなのに、自分が動けなかったばかりか、彼女の手を汚させてしまった。
眉を八の字に寄せ、申し訳なさそうに縮こまるなずなに、野薔薇はやや呆れてため息をついた。
「だったら何?呪詛師だって分かってたとしても、倒さなきゃこっちが殺されてたでしょ」
そう言った後でなぜなずながこんな風に謝るのか、その理由に思い当たる。
そういえば、なずなは呪詛師を殺したことがあるんだっけ。
しかし、なずながどう思っているかは別として、野薔薇自身はいずれ通る道だと覚悟はできていたし、そこまで堪えていなかった。
「もう済んだことでクヨクヨしたってしょうがないでしょ。私と虎杖はコイツらをどうにかするから、アンタは先に伏黒のとこ行きなさい」
なずなが変に責任を感じても面倒くさいと、野薔薇は話を切り上げようとする。
「で、でも、野薔薇ちゃんも虎杖くんもあの2人の血を浴びちゃってるんじゃ……」
「術式は解けたから大丈夫よ。それより今は伏黒と宿儺の指がどうなってるかの確認が先でしょ?ほら、さっさと行く!」
「う、うん、分かった……」
追い立てるように背中を押されて、なずなは宿儺の指の気配がする方へ渋々走り出した。