第13章 八十八橋の呪詛
「危ねぇなぁ!」
深夜の山道、しかもトンネルを出てすぐの所にまさか人がいるとは思わず、軽トラックの助手席にいた中年男性が窓から顔を出して後ろにそう吐き捨てる。
と、突然肩を掴まれ、荷台に引きずり出された。
トラックの荷台にはいつの間にか見知らぬ男が乗っており、その男に掴まれている。
「スピードを上げろ」
助手席にいた男性を人質に取り、壊相は運転手に更に指示する。
「ブレーキを踏めば、オマエもコイツも殺す。分かったな?」
運転手は何が起こったか分からず、ただただうなずくことしかできなかった。
逃げるように速度を上げる軽トラックを虎杖は走って追いかける。
ここで逃がすわけにはいかない。
追ってくる虎杖に見せつけるように、壊相は修復中の右腕を人質の男性に押し当てた。
壊相の血が男性の首筋の皮膚を腐蝕し、激痛に絶叫する。
「追うなよ、呪術師」
この3人、特に呪詛返しの女は、傷を癒やし確実に殺す。
トラックの荷台から置き去りにしてしまう弟の方を見て、胸が痛む。
すまん、血塗……!
弔ってやれなくて
だが必ず私が仇を―……
血塗の亡骸から少し離れたところで金槌を振り上げているのが見えた。
「……あの女、何をしている……?」