第13章 八十八橋の呪詛
「なずな、ビビってんじゃないわよ!ソイツの動きは私が止めてやるわ!」
攻めあぐねているなずなにここぞとばかりに野薔薇から共鳴りの援護が入る。
当然ながら、野薔薇の腕に刺さった釘の数は増えていくわけで……
腕を貫通している五寸釘とそこから流れ落ちる血を見て、なずなの胸もきゅっと痛くなる。
無理させちゃってごめん―……
ありがとう、野薔薇ちゃん
相手の攻撃力と機動力を同時に確実に削ぐため、なずなは渾身の力で鬼切を振り抜いた。
呪力での防御も虚しく、血塗の右腕と右足が落ちる。
「アアァッ!痛イ、痛イィイ!!」
「血ッ塗ゥゥウウッ!!」
「うるせぇな!共鳴り!!」
壊相は痛みに歯を食いしばり、血塗の元へ向かおうとするが、虎杖が行く手を阻んでそれを許さない。
壊相は選択を迫られる。
―術式を解くか否か―
このままでは弟を助けに行けない。
“朽”の発動中に“翅王”は出せない……!
だが“朽”にかかっている2人、特に呪詛返しを使う女は一番腐蝕の進行が早い。
彼女が倒れれば呪詛返しもなくなり、残りは同じく腐蝕の進む少年と刀の少女のみ。
呪詛返しの女が倒れる前に弟が刀の少女に殺される危険はあるか?
……まずない。
刀の少女は他の2人と比べて攻めが鈍い。
では、少年に私が殺されることはあるか?
それもない。
たとえ女に妨害されようと、女が死ぬより先に私がこの少年に殺されることはないだろう。
何よりここで術式を解いたら、その勝ち筋も危うくなる。
絶対に術式は解かない!