第13章 八十八橋の呪詛
乱入する形になったなずなは視線を走らせ、状況把握に努めた。
虎杖くんには頭から血を被ったような血痕、野薔薇ちゃんは左袖がなくなっている。たぶん敵の血を浴びて溶けたんだ。
しかも2人とも分かれる時にはなかった薔薇の紋様が……
敵の術式……?
2人の顔は青ざめて冷や汗を流しているし、動きもぎこちない。
川岸で見た通り敵の血が毒なのであれば、術式でそれを強化している可能性もある。
ぎりと歯噛みする。
私が隙をつかれて取り逃がしたせいだ。
血塗を逃さなかったら、こんなことにはならなかったかもしれないのに……!
「渡辺、そっち頼んだ!」
「わ、分かった!」
自責の念に駆られていたなずなは虎杖の声にハッと顔を上げ、二つ返事して鬼切を構え直した。
今は戦闘に集中だ。
後悔するのはすべて終わってから。
更に血塗に肉薄しながら、なずなはその相性の悪さに唇を噛む。
敵の術式が血に含まれる毒の強化なら、彼らの血に触れるわけにはいかない。
今は敵の術式に嵌っていないなずながいるから渡り合えているようなもの、自分も術式にかかってしまえば、戦況は一気に不利になる。
しかし、なずなの武器は刀。
当然敵を斬れば血が出る。
それが自分にかからないように立ち回ろうとするとどうしても攻めが甘くなる。
そして、もうひとつ―……
どうしても先程のカーブミラーに映った姿が頭から離れないのだ。
呪霊ではないかもしれない、という思いが引っかかり、あと一歩深く踏み込めない。