第13章 八十八橋の呪詛
芻霊呪法 共鳴り
対象から欠損した一部に人形(ヒトガタ)を通して呪力を打ち込むことで、対象本体にダメージを与える術式。
術式範囲の制限は緩く、対象との実力差、欠損部位の希少価値によって効果が変わる。
“血液”は芻霊呪法において決して価値は高くない。
だが「共鳴り」は対象との“繋がり”を辿る。
今、野薔薇の中にある壊相・血塗の血液は、蝕爛腐術の術式で2人と強く繋がっている。
野薔薇自身も痛みに呼吸を乱しながら、活路が見出せたことに笑みを深めた。
弟の方にも効いたのはタナボタだな。
このままじゃどうせ死ぬんだ、じゃんじゃか“共鳴り”ブチ込んでやる。
対する壊相は顔を歪めているものの、その原因は苦痛のみで表情に焦りはない。
なかなかに強烈
だが何度やっても私達の命には届かない。
我慢さえしていれば、いずれ死ぬのはあなた方!
しかも“朽”の発動中は痛みと毒でまともに動けな―……
「あっ、ガァァッ!?」
突然、血塗が悲鳴を上げ、赤色が迸った。
血塗の背後には血の滴る刀を手にした小さな影。
なずなが下から斜面を登って追いつき、血塗の背を切りつけたのだ。
血塗に気を取られた壊相にも虎杖が迫る。
「何故そこまで動ける―……」
刀の少女はともかく、この少年には“朽”が効いているはず。
壊相が回避行動を取ろうとしたところで、すかさず野薔薇が共鳴りを打ち込んだ。
痛みで動きが止まった壊相の顔面に虎杖の右拳がめり込む。
なずな以外の全員が同じ苦痛に苛まれる中、虎杖がここまで動けるのには訳があった。
彼は猛毒・呪いの王 両面宿儺の器。
故にあらゆる毒に耐性がある。
“分解”の痛みはあれど、その果ての“毒”は効かない。
そして、痛みだけでは到底虎杖を止めることなどできないのだ。