第13章 八十八橋の呪詛
呪胎九相図の兄弟に母の記憶はない。
人間にも術師にも特段恨みがあるわけではない。
150年―……
お互いの存在を頼りに封印を保ってきた。
「呪霊側につくぞ」
受肉してから初めて兄弟と対面した時、長兄の脹相から示された自分達の方針。
「大丈夫かな。アイツら胡散臭いよ、兄さん」
「呪霊が描く未来の方が俺達にとって都合がいい。ただそれだけの事だ。受肉の恩は忘れろ」
少し警戒感を持つ壊相に脹相はこう言い聞かせる。
「いいか、弟達よ」
「壊相は血塗のために、血塗は俺のために、俺は壊相のために生きる。俺達は3人でひとつだ」
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兄弟のため、兄弟が望むのであれば、私はそれに殉ずるのみ。
「辛いようでしたら、今すぐ殺して差し上げましょうか?」
しかし、窮地に立たされているはずの野薔薇は薄く笑った。
その姿に壊相は怪訝そうに眉を寄せる。
「くくっ、当たれば勝ちの術式、強いなオマエら。でも残念……私との相性、最悪だよ!!」
後ろに手を回し、五寸釘を取り出した野薔薇は、迷いなくそれを自身の左手首に打ち込む。
芻霊呪法
―共鳴り―
ドクンと壊相、血塗に痛みが走る。
「我慢比べしよっか」
釘が刺さった箇所から血が滴るのにも構わず、野薔薇は笑っている。
「痛いのは嫌だろ?なら、さっさと泣きながら術式解けよ」
壊相も血塗も激痛で脂汗が滲む。
呪詛返しの術式!?
我慢比べ……こちらの術式を解かねばコレが続くというわけか……!