第13章 八十八橋の呪詛
一方、なずなは無我夢中で血塗と呼ばれた呪霊を追いかけていた。
兄者と呼ばれていた方は虎杖達がどうにかすると信じ、翅王を掻い潜ってこちらにターゲットを絞ったのは、彼らの狙いが宿儺の指だからだ。
今、指を持っているのはおそらく伏黒。
そして、指の気配が動いていないことから、指を取り込んだ特級呪霊を祓う時に負傷して動けなくなっている可能性が高い。
絶対に伏黒くんのところへは行かせない……!
なずなはその一心で逃げる背中を追いかけ続けた。
しかし、前を走る血塗は一向に指の所へ向かう気配がない。
なずなは追いかけながら眉をひそめる。
どうして……?
この呪霊、どこへ行こうとしてるの……?
どこへという疑問もそうだが、追手であるなずなに少しの牽制もない。
一心不乱にどこかを目指している。
怪訝に思いながら追いかける内に、林を抜ける。
そのまま林を区切る柵を飛び越え、眼下の道路へ難なく着地。
山道特有の急カーブがある車道を横切る。
ふとそこに設置されたカーブミラーが目に入った。
「……っ!?」
本当に偶然だったが、そこに映っている光景になずなは息を呑む。
そこにはなずなと血塗が映っていた。
血塗は車道のガードレールも越える。
その先は舗装された斜面だ。
斜面の下まで行くつもりなの……?
同じようになずなもガードレールを飛び越えた。
……が、斜面を下りていくかに思われた血塗は、なんと車道と並行して斜面を走り出していた。
「……しまった……!?」
どんなに身体強化できても、なずなには急斜面を壁走りのように進むなんて芸当はできない。
なす術もなく、なずなは斜面を滑り落ち、血塗にどんどん引き離されてしまう。