第13章 八十八橋の呪詛
蝶の翅のように血液を広げた壊相。
血が滴った川岸の石はジュッと音を立てて溶けている。
それを確認した虎杖が横目で野薔薇となずなに注意を促す。
「釘崎、渡辺、あの血さわんなよ!」
「分からいでか……っ!」
ヒュッと風を切る音と共に血が野薔薇の髪を掠めた。
血に少し触れてしまった髪の毛先が溶けている。
結界内で虎杖が戦った呪霊に「兄者」と呼ばれていた目の前の男。
石や髪が溶けたことといい、きっと弟の血と同じような性質を持っている。
「走りなさい、背を向けて」
広がった血液があらゆる方向から虎杖達に襲いかかってきた。
「渡辺、先に行け!」
「う、うん!」
固まっていると3人まとめて餌食になると判断した虎杖がなずなを促し、それにうなずいたなずなは脚に呪力を集中し、スピードを上げる。
虎杖と野薔薇を少し離したところで、なずなが視界の端で何かを捉えた。
川岸から外れた林の中に消えていく暗緑色。
あれは弟の方の……!
逃してはいけないと直感し、自分もそれを追って林の中へ入っていく。