第13章 八十八橋の呪詛
だが、何の前触れもなく、唐突にその時は訪れた。
俺が中学3年に上がって間もなく、津美紀が呪われた。
正体不明
出自不明
全国に同じような被呪者がいるらしい。
何も分からないということだけが分かって、津美紀は寝たきりになった。
俺はこの理不尽な現実を呪った。
津美紀が一体何をしたんだ?
どうして呪われなければならない?
津美紀が目を覚まさなくなって、今までの言葉が、優しさが痛いくらいに蘇ってきて……
―誰かを呪う暇があったら、大切な人のことを考えていたいの―
いつも笑って、綺麗事を吐いて
―人を許せないのは悪いことじゃないよ。それも恵の優しさでしょう?―
俺の性根すら肯定する。
そんな津美紀も俺が誰かを傷つけると本気で怒った。
俺はそれに苛ついてた。
事なかれ主義の偽善だと思っていたから。
でも今は、その考えが間違いだって分かってる。
俺が助ける人間を選ぶように、俺を選んで心配してくれてたんだろ。
悪かったよ、ガキだったんだ。
謝るからさ、
さっさと起きろよ、バカ姉貴―……
ズキンと頭に痛みが走り、景色が現実に戻る。
「クソッ、頭痛ぇ……」
この八十八橋の呪いも重複してただけで、津美紀が寝たきりの原因になった呪いは解けてないだろうな。
後は、指のことを虎杖に何て……
疲労と負傷の痛みがピークに達した伏黒の意識は、完全に沈み込んでいった。