第13章 八十八橋の呪詛
―小学1年の時、俺の父親と津美紀の母親、それぞれの片親がくっついて……
―蒸発した―
その後、俺の前に現れた白髪の怪しい男―後の五条先生が言っていた。
「君のお父さん、禪院っていういいとこの呪術師の家系なんだけど、僕が引くレベルのろくでなしで、お家出てって君を作ったってわけ」
指をワキワキと動かしてそう言ってくる姿は、丸いサングラスと相まってかなり胡散臭い。
「恵君はさ、君のお父さんが禪院家に対してとっておいた最高のカードだったんだよ……ムカつくでしょ」
そこでやっと蒸発資金の謎が解けた。
俺は禪院家とやらに売られたらしい。
あぁムカつくよ、
特にアンタのそのデリカシーのなさに。
でもそのムカつく男が禪院家の件を帳消しにして、俺が将来呪術師として働くことを担保に、俺と津美紀、2人の高専からの金銭的援助を通してくれた。
……何が呪術師だ、馬鹿馬鹿しい。
俺が誰を助けるってんだよ。
昔から呪いは見えたし、自分の影に他人にはない何かがいることも分かっていたが、ただそれだけ。
呪術なんて程遠く、この時はピンと来ていなかった。