第13章 八十八橋の呪詛
五条は伏黒の前にしゃがみ込んで、目線を合わせる。
「バントが悪いって言ってんじゃないよ。野球は団体競技、それぞれに役割があるからね。でも呪術師はあくまで個人競技」
「他の術師との連携は大事でしょ」
「まぁね、でも周りに味方が何人いようと……死ぬ時は独りだよ」
差し込む夕日に室内が染められる中、サングラスから覗いた六眼は冴え冴えとしていて、吸い込まれそうだった。
「君は自他を過小評価した材料でしか組み立てができない。少し未来の強くなった自分を想像できない。君の奥の手のせいかな、最悪自分が死ねば、全て解決できると思ってる……それじゃ僕どころか、七海にもなれないよ」
五条の右手がゆっくりと上がる。
「“死んで勝つ”と“死んでも勝つ”は全然違うよ、恵」
そして伏黒の額を人差し指で打った。
「本気でやれ。もっと欲張れ」
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そこでふと目が覚めた。
今のは夢か……?
目の前には先程まで戦っていた特級呪霊がニタニタと嗤っている。
背後の岩に血痕があるところを見るに、さっきの呪霊の一撃でここに頭を打ちつけて失神していたようだ。
周囲に視線を走らせると、自分と特級呪霊だけしかいない。
何秒気を失ってた?
玉犬は破壊……いや、術式が解けたか。
少年院の時と同じく、特級呪霊は遊んでいる。足掻こうが何をしようが最終的に殺されるだろう。