第13章 八十八橋の呪詛
「っ!!」
バキィと重い音を立てて伏黒が畳の上に投げ出された。
伏黒を殴り飛ばした張本人である五条はヒラヒラ手を振っている。
「はーい、また僕の勝ち。珍しいよね、恵が僕に稽古頼むなんて」
そう、この日、伏黒は五条に特訓をつけてもらっていた。
普段ならこんな風に五条に頼ることはしない。
だが、今回はそうも言っていられない事情があった。先日の交流会だ。
死んだと思っていた虎杖と再会して、伏黒では手も足も出なかった特級呪霊を退けた。
また命を狙われても自分で対処できるようにとの配慮で、五条が匿いながら特訓していた2ヶ月ほどで急成長していたのだ。
そんな虎杖を見て、負けていられないと切実に思った。
「悠仁に追い越されて焦った?」
図星を言い当てられた伏黒はその場にあぐらをかいて口を尖らせる。
「まぁ、背に腹は代えられませんから」
「僕に頼るの、そんなに嫌?」
五条が鼻の頭を掻いて肩をすくめる。
「恵はさぁ、実力もポテンシャルも悠仁と遜色ないと思ってんだよね。後は意識の問題だよ思うよ……恵、本気の出し方知らないでしょ」
「は?俺が本気でやってないって言うんですか」
カチンときて突っかかるが、五条は相変わらずの調子で続けた。
「やってないんじゃなくて、できてないんだよ。例えばさ、この前の野球、なんで送りバントしたの」
なぜここで野球の話が出るのか、あまりに脈絡がなく、伏黒は固まる。
「自分がアウトになっても野薔薇の塁を進めたかった?それはご立派。でも悠仁や僕なら、常にホームランを狙う」