第13章 八十八橋の呪詛
目の前に落ちてきたモノに伏黒は瞠目する。
呪霊の行動パターンに合理性を求め過ぎてはいけない。
それでもずっと引っかかっていた。
何故今になってマーキングした人間の呪殺を始めたのか。
1人目の呪殺は6月―……
虎杖が宿儺の指を飲み込み、宿儺が受肉したのも6月
ゆっくりと立ち上がり、ニンマリと嗤ったソレは、少年院で見た特級呪霊と全く同じ姿をしていた。
疑問が確信に塗り替わる。
気配が大きすぎるモノ―
息を潜めているモノ―
既に呪霊に取り込まれているモノ―
これは“共振”だ。
八十八橋の呪霊は宿儺の指を取り込んでいた。
その呪霊の中で力を抑えていた宿儺の指が、6月の虎杖の受肉をキッカケに呪力を解放したんだ。
今回は少年院の時より被呪者が多い。
目の前の特級呪霊も見てくれは同じだが、おそらく少年院の奴より数段―……
呪霊は手に呪力の塊を吐き出し、反対の手で引き伸ばし、矢のように放ってくる。
凄まじい速さで飛んできた呪力を黒刀の刃で受けるが、耐えきれず折れ、伏黒の額も少し切れる。
強い……!
呪霊は止まることなく伏黒の後ろに回り込んで凄まじい速度で拳を繰り出す。
が、伏黒は渾に抱えられる形で避けた。
「鵺……っ!?」
影絵を作るよりも早く呪霊が眼前に迫ってくる。