第13章 八十八橋の呪詛
「モグラ叩きの要領でいいのよね?」
「ああ、そのまま呪霊と出口を潰し続けてくれ。たぶん反撃はない」
伏黒も式神を出して呪霊を叩きながら、野薔薇の問いかけにうなずく。
現に呪霊は穴から顔を出して嗤うだけで反撃してくる素振りは見せない。
この調子で呪力が尽きるまで片端から呪霊を叩いていけば祓える。
「限定的とはいえ、術式範囲が広い分、本体に攻撃能力がないってこと?」
「あくまで“たぶん”な」
不安材料だった術式範囲・被害者数・結界、すべてが本体に引き算として作用している。
ラッキーだ。
これなら早い内に祓える。
となると、問題はその後か―……
「野薔薇ちゃん!?」
なずなの切羽詰まった声で伏黒は引き戻された。
見ると壁に暗い穴が空き、そこから伸びた手が野薔薇の腕を掴んでいる。
「釘崎!?」
伏黒が瞠目したのとなずなが野薔薇を掴んだ謎の手に鬼切を振り下ろしたのがほぼ同時。
しかしその手は、鬼切が届く前に野薔薇を掴んでいた内の片手を離し、鬼切ごとなずなの手を掴んでくる。
そして、そのまま2人をを引っ張り始めた。
野薔薇達が踏ん張っても向こうの腕力の方が上だ。
結界の外に引きずり出される……!
伏黒も手を伸ばしたが、少し距離があって間に合わない。
身体の半分ほどが穴に埋まりながら、野薔薇もなずなも伏黒の方を見る。
「問題ない、アンタはモグラを叩け」
「そうだよ、こっちは私達がなんとかするから」
そう言い残し、2人は向こう側へ消えていった。
「クソッ、アイツらよく吸い込まれるな」
それより今の手はなんだ?
モグラとも虎杖が相手をしているヤツとも違う。