第13章 八十八橋の呪詛
穴から顔だけ出した呪霊は4つの目を細めてナアァァと嗤っている。
その呪霊の嗤い声とは別に地響きも聞こえた。
洞窟に反響してどこから鳴っているか分からないが、明らかに目の前の呪霊が発しているものではない。
……それともこの呪霊の術式だろうか。
なずなが身構えると、呼応するように鬼切が脈打った。
目前の呪霊に反応したのではない。
この反応は……
「後ろ!」
他の3人に鋭い声で知らせ、背後に振り向くと、うっすら砂煙が立っている。
砂煙はどんどん濃くなって、何かがかなりのスピードで近づいてきているのが分かった。
速度を落とさずにこちらに突っ込んできたソレを左右に散って避ける。
「あ゛なんだぁ?先客かぁ?」
砂埃を巻き上げて着地したソレは、ゆっくりと立ち上がり、言葉を発した。
暗緑色の体に眼のない眼窩と鼻、口から血を流した小さな人面の下に、横に裂けた巨大な口を持つ異形だ。
人語を解する呪霊……?
「伏黒、コイツ別件だよな?」
「ああ」
伏黒の肯定を確認し、虎杖は両手に呪力を込める。
「じゃあオマエらはそっちに集中しろ。コイツは俺が祓う」
「なんだぁ?遊んでくれるのかぁ?」
以前、五条から領域展開の課外授業を受けた時、コミュニケーションが取れる呪霊は相当強い呪霊だと教わった。
ただ、伏黒の姉や藤沼が負っている呪いとは関係ない。
優先順位はあの四つ目の呪霊の方が上だ。
ならば自分は、コイツが3人の邪魔をしないように立ち回るだけ。