第13章 八十八橋の呪詛
小石を踏む音で伏黒はやっと背後の存在に気づいた。
振り向くと、いつの間に尾行されていたのか、目をすがめた虎杖と野薔薇、眉を八の字にしたなずながいる。
「アンタ、自分の話しなさ過ぎ」
「だな」
野薔薇はわざとらしくため息をつき、虎杖もやれやれと肩をすくめた。
「ここまで気づかないとは、マジでテンパってるのね」
「別に何でも話してくれとは言わねぇけどさ、せめて頼れよ、友達だろ?」
「そうだよ、1人で行くなんて放っておけないよ……言い難いことなら言わなくてもいいけど、私達にも手伝わせて」
それらの言葉は妙に腑に落ちて、ふと肩の力が抜けた気がした。
伏黒は少し俯いてぽつりと話し出す。
「……津美紀は……寝たきりだ。この八十八橋の呪いは、被呪者の前にだけ現れる。本人が申告できない以上、いつ呪い殺されるか分からない」
今まで誰にも話したことのなかった寝たきりの姉のこと。
そして自分の本心もするりと口から出てくる。
「だから、今すぐ祓いたい」
そこまで言って、顔を上げた。
「でも任務の危険度が上がったのは本当……」
「はいはい、もう分かったわよ」
「はじめっからそう言えよ」
「みんなで協力した方が絶対早いよ」
―彼らに負担を押しつけはしないか―
そんなことを考えていたのが馬鹿らしくなるほど、軽い調子でたしなめられる。
そんな同級生達に伏黒は少しだけ笑みを浮かべた。